デルフィの神託

 


デルフィは、中央ギリシャの中心にあるフォキス地方にあって、コリント湾の水位から600メートルのところ、パルナッソスの高い台地をささえる「かがやく岩」の絶壁のふもとに位置している。
ここは、オリンポスの神々アポロンや、アテーナーの現われるずっと以前に、すでにその地域の中心地となっていた。
発掘によって、ミケナイ時代から住居や祭殿のあったことが判明している。まさに聖地そのものである。

聖地とは、「この世に存在しない場所」である。

聖地とは、光の記憶をたどる場所である。

聖地とは、母胎回帰願望と結びつく。

聖地とは、夢見の場所である。

聖地は、記憶装置として機能する。

聖地は、場所を移動しない。

聖地は、官能的なものである。


大地の豊饒や病気平癒、苦難からの解放といった、さまざまな思いが寄せられるわけで、そうした人々の願いに柔軟に対応する為には、それ自身、きわめて多様性の高いシステムである必要があるのだった。

(撮影 小堺 文彦)