(社)日本ツーバイフォー建築協会が発行する会報誌「ツーバイフォー」の最新号(177号)で、西田恭子氏(一級建築士、三井のリフォーム住生活研究所 所長)がツーバイフォーのリフォームについて興味ある寄稿をされていますので取り上げます。内容は大きく分けて
1. ツーバイフォー住宅にまつわる大きな誤解
2. 滞りなくリフォームできる安心感
3. 誤解されてしまったワケは・・・
4. 「できない」のではなく「事例が少ない」「ルールを知らない」だけのこと
5. ツーバイフォー住宅の需要は急上昇
6. これからが適齢期、安心してリフォームしていただくために
以上6つの項目になっています。
要約すると、ツーバイフォーは耐力壁などの制限によってリフォームがしにくいと考えるのは誤解である。「ルールを知らないからできない」の「ルールを知らないから」という部分がいつの間にか省かれてしまい、「できない」という言葉だけが独り歩きしてしまった。日本でツーバイフォーが建築工法として広く認可されるようになったのが1974年のことで、そのためリフォームの実例が少ないことで、できないと思われている。在来工法の場合、構造図がなかったり、あっても図面通りになっていなかったりするケースがあり、解体時に確認する事項が多くある。一方、ツーバイフォー住宅の場合には構造図があることが多く、解体してからの変更が少ない。構造上のルールが明確なので、安心してリフォームを進めていくことができる。ツーバイフォー住宅はリフォームしにくい、という間違った情報が蔓延している中で、耐震性、断熱性、気密性、耐久性などツーバイフォーの優れた性能が評価されて、ここ10年需要が伸びていることが不思議なくらいである。築年数がかなり経過したツーバイフォー住宅では、もともとの基本性能が高いので、耐震性能や断熱性能を現在の基準に合わせる上で苦労が少ない。1880年築の札幌豊平館、1921年築の自由学園明日館を例に、適切なメンテナンスで50年、100年と住み続けることができる。最後に、これから住宅を購入する人にも、リフォームについてまつわる誤解を捨て、いつか必ず我が家にもリフォーム適齢期がやってくることを見通したうえで、安心してツーバイフォー住宅を選んでほしい、と締めくくっています。
業界誌であるがゆえ多少下駄を履いているとしても、僕の経験からして極めて的をついた意見であると思います。今までに10数件大がかりなリフォームを設計していますが、ほとんどが在来工法です。やはりツーバイフォーは少ないです。それらは西田氏が言うように構造図がなく、解体後に設計変更が必要になる場合が多くありました。床下もスカスカで、フローリングの隙間から、下の地面が見える場合も多くありました。地面がですよ。ツーバイフォーの場合は土間仕様以外、1階の床組みの上に必ず構造用合板を張りますので、そのようなことはありえません。このようなスカスカの場合には、床下断熱工事から入りますのでコストもかさみます。すべてではないのですが、工務店が元請けで、下請けの設計事務所に代願(建築確認だけの設計)だけさせるパターンでできた在来工法の住宅がいちばん厄介です。リフォームする時が一番苦労します。基礎伏図はおろか矩計図もありません。残された図面や書類で「代願」か、そうでないか、あらかた想像できます。ツーバイフォーの場合は、構造図がないと施工できませんので、その点が「代願」で建築された在来工法と一番違うところです。大工がその日の気分で、窓の開口を決めたり、床根太の方向を決めたりはできません。すべて構造図に寸法表示がされています。
2008年11月30日現在の国交省のツーバイフォー住宅着工統計によりますと、茨城県では前年比29.1%増の2.315戸、千葉県では前年比16.2%増の5.764戸となっています。減少した県は、全国で青森、秋田、沖縄などわずか8県です。着実にツーバイフォー住宅のストックは増えています。今後10年、家族構成の変化やメンテナンスも含めて、ツーバイフォー住宅のリフォームは急増していくものと思われます。そのために設計者としてどのようなアドバイスができるかが問われます。耐震性能、断熱性能、維持管理をベースに、オーナーの意図していることを正しく読解して、提案していくことが我々の役目だと思います。
うちはアトリエ系設計事務所なので、リフォームの設計もそう多くはありませんので、今まで漠然と在来工法の家はこんなものかなと考えていました。大所帯を統括する西田氏は、多くのクライアントからツーバイフォーに関する情報が入っていると思います。ツーバイフォー住宅に関して誤解をされている方がいかに多いか、そして、「ツーバイフォー住宅こそ、安心してリフォームできる」と言い切っていることが、西田氏の実績に裏づけられた力強い新春寄稿でした。
2009年 睦月
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