1987年竣工のアーキヴィジョンオフィスのリファイン工事。この間のメンテナンスは、97年に外壁の塗り替えを一度行っているほか、打合せコーナーに珪藻土(エコクイーン)を多少荒っぽく、コテむらをあえて引き出しながら塗ったぐらいです。これも紙クロスの上から直接コテ仕上げをしましたのでわけなく終わりました。リフォームというより、むしろ実験といったほうがよいかもしれません。したがってほとんど建てっぱなしの状態で21年が過ぎたわけです。外壁と珪藻土以外は、この21年で書籍が増えたことによって、造作本棚などをそのつど増やしたほか、ビルエバンスのしっとりとした旋律を波にたとえ、その波のリズムでウェーブCDラックを造ったくらいです。
メンテナンスといったものにはほとんど手を出していない状況でここまで来た理由として、まあ、やる必要性に迫られてなかったというのが本当のところです。必要に迫られないからやらない、この判断が正しいかどうかはさておき、昨年の春ごろから、アーキヴィジョンオーナー様から相次いでメンテナンスや、リモデル、リフォームなどの依頼をいただくようになりました。そこで工事をしたところ、建物が「蘇生した」という雰囲気が強く感じられました。施工場所によっては、新築と変わらないテクスチュアを醸し出しているところもあります。また、普通の洋室を防音室に改装した場合などは、空間の性能自体が格段にレヴェルアップしています。オリジナルをそのまま残し、その時々の状況の変化に対応したリファイン工事は、資源の無駄遣いという点からもお勧めです。建て替えとなると膨大なごみが出るわけですが、既にあるものを加工したり、活用したりするリファイン工事は結構面白いものです。メンテナンスとしては外回りと床下(4年から5年)を定期的に確認しておけばよいと思います。
さてオフィスのほうは、21年以上ほっぽらかしの屋根の色合いの変化はさすがに気になるところで、この際「屋根フレッシュシリコン」(エスケー化研)で塗り替えです。瓦の場合、15年位前からは設計で三州陶器瓦を指定していますので、その場合塗り替えはほとんど必要ありません。オフィスはセメント系瓦ですので本来ならば、築12年位で塗り替えたほうがよかったのですが・・・・。セメント系瓦は築15年を過ぎると、表面の劣化が早く進みます。その他ほっぽらかしのところで今回施工する部分は、床下防蟻工事とバルコニー防水工事です。いずれも問題がなさそうなところでしたが、今回は必要に迫られなくても築年数が経ちすぎていますので施工することとしました。
2008年 神無月
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