● ● ● ● ● 歴史シリーズ(ファンズワース邸) ● ● ● ● ●


 

歴史シリーズ第3弾は、現代住宅の古典ミース・ファン・デル・ローエの「ファンズワース邸」。シカゴ近郊に建つ独身女性のためのセカンドハウスで1950年に完成。定期的な洪水に見舞われる建築地のため、床が地盤面より約1.6メートル、8本のH形鋼で持ち上げられています。この高さは、洪水のときの平均水位を上回る高さです。まるで宙に浮いているような感覚を、精緻なディティールによって表現したミースの最後の住宅。
シカゴの冬はとても寒い。メインの暖房は二つのオイルファーネスからの温風によっています。床の下面は外気にさらされているため、大理石の床を足元から暖める必要があるので、補助的に輻射熱による温水床暖房方式がとられています。僕がいつも設計している床暖房の方式とは基本的には同じです。
鉄とガラスとコンクリートで表現した精神性の高いこの住宅は、有史以前の湖上生活を思わせる哲学的主題にも挑戦しているように思われます。
学生時代にこのファンズワース邸を完璧なまでに作った同輩がいて、不真面目だった僕もいつかは作ろうと思い、5年前に真面目なスタッフに作らせたものです。

2009年 睦月