筑波山を見上げる森の中の敷地に今、外断熱、208(ツーバイエイト)の構造を採用した住宅の工事が着々と進められています。206(38x140)なら時々耳にする事もあるかと思いますが、この建物は桁行方向の柱(正確には間柱)を全て38x184(ツーバイエイト)に統一しています。そしてこれらの柱を全て現しで仕上げるのです。逃げも隠れも出来ないまさにスッピンの家そのものです。在来工法で太い梁やたるきを現すスッピンの家はよく見かけるでしょう。住宅誌などでは写真写りの良い家もよく出ています。白いぬり壁にこげ茶の梁ですから良く写らない方がおかしいのです。この住宅は綺麗な写真写りを目的とした在来住宅とは対極にある、性能重視の非常に楽しい家に仕上がるように計画されています。多少の荒々しさもところどころに出てきます。ぬり壁やクロスは所詮化粧でしかすぎない、周囲に凛として立つ木々の力強いイメージがそのまま構造に転写されています。
構想、基本計画、実施設計に半年以上費やしています。工事監理も第三者が行い、性能保証住宅(今は僕の設計する全ての住宅に義務づけています)にも登録しています。
今日は現場で電気工事の担当者といかに配線を見えないようにするかグッドアイデアをいくつかちりばめてきました。(2階の梁も現しなので、へたをすると全て配線だらけになってしまう)この電気屋さんの社長とはもう18年位の付き合いになります。今日現場に来ていたのはその息子さんです。いっぱしの職人です。当時小学校1年生くらいであったであろうか。光陰矢のごとしとはこの事か。いくつかの職種(職人さん)で工務店の親分より長く付き合っている方もいるが、怪我をしないで健康なまま、設計者のわがままに付き合ってほしいと思うのが本音のところです。今日は施主も工務店の親分も監理者もいない二者だけの静かで熱い打ち合わせでした。僕は行きたいときに(予定に入って無くても)突然に現場に行くのでこういう場面によく遭遇します。案外、こういう時こそ問題解決の糸口が見つかる場合が多いのです。「問題解決」これは非常に大切なことです。図面どおりに工事が進められていることを確認する工事監理は、どちらかと言うと品質管理に重点が置かれますが、現場ではあらかじめ決められたマニュアルの無いことも多く、問題点が起こりやすいのはどこでも同じでしょう。僕の経験則から何人もの目が現場に注がれるのがやはり一番いいと思います。新しいアイデアを現場で実現させるわけですから慎重になるのは当然です。「アイデアは大胆に、現場は慎重に」これからもこんな感じで進めていこうと思っています。
2006年 霜月
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