● ● ● ● ● 最長不倒距離 ● ● ● ● ●


 

「最長不倒距離」・・・・スキーのジャンプでは、もうこれ以上誰も飛べないであろうとされる距離をいう。飛んだ選手からすれば「安全地帯」の確保になる。今回は距離という空間の長さではなく、時間の長さである。

「デザイナーズアパートメント」基本構想から引渡しまで4年半。たとえて言うと、卒業間近の小学生が引渡しの時には高校2年生になっている長さになる。あるいは、海外転勤を命じられた課長が、上海に2年、ホーチミンに2年赴任し、帰国後部長に昇進している長さともいえよう。その間大幅な設計変更があり、一時実施設計を中断していた時間も含まれているが、今にして思えば長すぎたという感じはなく、普通に打合せを重ね、気がついたら竣工したという感じである。熱中していると、設計も現場もあっという間に終わってしまうのである。近隣から「音がうるさい」と多少のクレームがついたものの(もちろんこれはルサンチマンの一形態である)トラブルがなく、2月19日に無事引渡しが終わった。工事期間は約9ヶ月であった。バレンタインを引き渡し予定日にしていたが、外構工事と、床暖房やガスのボイラーの取り合いの変更、外壁光触媒工事の補修などで5日程延びたが、3階は暖房無しでも暖かく、そこからの眺めもすこぶるよい。遥か水平を見渡すというよりも見下ろす感覚である。見下ろしたところにはプライベートパティオがあり、これからオーナーの好意にしている庭師によって造園工事が始まる。

設計期間、工事期間を通して、オーナーの経営する某駅前の「エグゼブティブナイトラウンジ」に幾度となく招待というか接待を受け、現場での打合せ後のひと時を「癒し」でもって時間を忘れさせてくれた。本来ならオーナーを接待する立場であるが、接待することが苦手なため、ひたすら「される方」を選択した。そこは「エグゼブティブ」という名にふさわしく、夜も寝静まったころではなく宵の口から「港町ブルース」や「そして神戸」などが流れていたのが記憶に甦る?????

 

2008年  弥生