● ● ● ● ● 「サムデイ マイ プリンス」 対決 ● ● ● ● ●


1986年12月、ニューヨークのクリントンスタジオで録音された小曽根真の「スプリング イズ ヒアー」のジャケットの裏には、今は無き、マンハッタンのワールドトレードセンターがそびえ立っている。ロイ・へインズが参加したこのアルバムは、流れるような小曽根のピアノタッチが楽しめる。ベース ジョージ・ムラ―ツを加えてのピアノトリオによる演奏である。「サムデイ マイ プリンス」は3曲目に登場する。スタンダードを集めた作品であるが、小曽根流の表現を満喫できるアルバムだ。

 

 

一方、超名盤として知られるマイルスのアルバムは、1961年にやはりニューヨークで録音されている。リハーサルなどやらず、まったくもってアドリブで演奏に参加したコルトレーンのテナーは、想像をはるかに超える出来栄えだ。ウィントン・ケリー、ポール・チェンバース、ジミー・コブの息もピッタリ合っている。最初のテナーでハンク・モブレーが、どちらかと言うと物静かな演奏をしているが、そのあとのウィントン・ケリーのシャキシャキしたピアノタッチは、次に出てくるコルトレーンを予感させる。
さて、最後に登場するのはヒトミのデビュー作「ファースト・フライト」だ。これはジャズ好きにはたまらないアルバムだ。ピアノ ジェラルド・クライトン、ベース トム・アルトゥーラ、ドラムス ジャスティン・ブラウンそしてテナーがヒトミのワンホーンによるカルテットである。2006年10月の録音。

 

 

これらを時系列で追ってみると、マイルスから小曽根まで25年、小曽根からヒトミまで20年になる。「サムデイ・マイ・プリンス」はフランク・チャーチルの作曲で、ディズニーの映画「白雪姫」の中で流れている。
それぞれ聞き比べながらこれを書いているわけであるが、「対決」である以上、白黒つけなくてはならない。今回は録音時、弱冠22歳であることを加味して、ヒトミ(本名、大羽ひとみ)の勝ちとする。なお、このアルバムにはコールポーターの「恋とはこんなものかしら」、山田耕作の「赤とんぼ」が始まりと最後に選曲されている。

 

                         2007年 霜月