● ● ● ● ● 終着駅 ● ● ● ● ● |
奥村チヨの「終着駅」は、事務所にある「廃盤ベストコレクション」の中に収められている曲の中でも名曲のひとつである。北のはずれの稚内も終着駅であるが、最後に降りる駅であるからその先はない。えてしてそういう状況空間にあってはロマンが生まれる場合が多い。そこで降りなければただ引き返すだけである。引き返してはドラマにならない。居眠りをして目的の駅で降りられず引き返したとなれば、漫才の世界である。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「その男」は意を決して、終着駅で降りることを決心した。吹雪の舞い散る中、ところどころで足を滑らせながら、場末の飲み屋にたどり着く。かつてはなじみの店であったが、当時の店主はもういない。看板も聞き覚えのない名前に変わっている。建物だけは当時の雰囲気を残しているが、すきま風だらけだ。雪で包まれた重いコートから雫がたれて、キラリと光る土間が寂しく笑っている。チビリチビリと飲み始める。深い悲しみと達成感が心を惑わす。いつになく酔いは早い。日付が変わろうとしているためか、夜は深く客はまばらだ。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ さて、このような状況空間を設定した場合、次に展開されるであろう物語として 2
別れた女が若い男と入ってくるが、冷たい視線を「その男」に向ける。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 登場人物は「その男」、2人の刑事、別れた女と若い男、同級生、K子、店主、同僚の計9人である。この中に1人の犯人がいると仮定しよう。仮に刑事の1人が犯人であると仮定すると、おおかたドラマの展開として、その刑事とK子や店主、別れた女、同級生などとの関連性が物語の前半を占める。一方、さらに複雑な展開の場合は、刑事のうちの1人がかつての同僚と同一人物であったりする場合である。当然この場合は、「その男」もかつては刑事ということになる。
2007年 皐月 |