身障者と共に暮らす家 

誰しも自宅の目の前で、愛する子供が交通事故に遭おうとは夢にも見ないことである。自転車通学をする小学生の高光君は、下校途中に車と接触。それ以後、車椅子の生活を余儀なくされるようになった。母親は、ヘルメットさえ付けていれば、と話されるのだが.....

長男の高光君が交通事故に遭ったのは、今から7年前。意識不明の状態が続き、一時は命さえ危ぶまれたといいます。奇跡的に命はとりとめたものの、脳幹を損傷していたために、体に重い障害が残ってしまいました。自分の足で歩くことができなくなってしまった高光君が、快適に自分の力で暮らせる家。これが、家を建てるときの基本コンセプトでした。希望がかなって、できる限り自分のことは自分でしながら、高光君は暮らしています。

家の中では、車椅子よりもハイハイして移動することの多い高光君は、部屋から台所に移動したり、弟とゲームをしたりと元気いっぱい。そんな彼の夢は、「結婚して、この家を出ていくこと」だそうで、これは、自立心を養うためにこの家を建てたお母様の希望通り?

障害を持つ子供を育てること−それは、外側から見ているだけでは決してわかることのできない苦労を抱えているはずです。でも、そんな苦労を周囲には感じさせないお母様の明るさから生まれたこの家は、家族みんなが元気に暮らせるエネルギーを与えてくれているようです。

当然のことながら、以前の家は車椅子やハイハイに適さず、高光君にとっても、家族にとっても不自由極まりなかった。玄関の上り框が高すぎたり、浴室が狭いといったこともさることながら、高光君にとっては、室内の床レベルの段差がかなりしんどかったようである。(ハイハイをしているため、角が足にぶつかり、足の傷が絶えなかったのである。)
事故が原因で家族の中がぎくしゃくしたりすることなく、むしろ絆が深まったようである。同じ敷地内に住む祖父母からの一途な愛情もそのひとつである。
看護婦を目指す高光君の姉と、地道に剣道の練習に励む弟と共に、今では平和な毎日を送っている。
     
     
この住宅は、私の家づくり NO.34(主婦と生活社)に取り上げられました。