設計当初(1996年)3案作成したプランニングの中で、オーナーの母上が「これがいい」と選択されたプラン(カフラー王に捧げる家)が、そのまま実現した。打合せ当初にはデザインコンセプトが古代エジプトであるようなことは一切話さず、インテリアの内部をつめていく段階で少しずつ明らかにしていった。コンセプトがエジプトであることを話した時には、さすがにオーナーも驚いていたようであるが、だからといってそれを変更することなども考えていなかった。したがってそのまま進んだわけである。
「ではなぜエジプトか」ということになるが、ナイル川下流のキザの大地と利根川から分岐した江戸川下流のこの敷地の雰囲気の類似性、設計中にエジプトを旅行したことなどが、主な理由である。
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天井高さ5.5mを超えるリビングの上にかぶせたピラミッド屋根(方形屋根)は正確に東西南北に向いており、底辺215メートル、高さ136.5メートルのカフラー王のピラミッドと同じ12.7寸勾配に設計している。ただし、素材は銅板葺きとし、屋根を軽くすることで耐震性に寄与している。(カフラー王のピラミッドは上の方の一部を残してくずれている)
また、リビングの内部には、クフ王、カフラー王、メンカウラー王のピラミッドのメタフォアが現れ、空高く昇る太陽(丸窓)からそれぞれが照らし出される仕掛けになっている。
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御夫婦だけで生活されていることもあり、8年が経過したが、何もメンテナンスするところがなく、内部は入居当時とさして変わらなかった。地下に眠るカフラー王もニッコリされていた。
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